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記憶の科学的測定に初めて取り組んだドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウス氏が16年にわたる研究結果として発表した結果は、なんと「覚えたことのおよそ半分は、わずか1時間で忘れてしまう。」ということでした。
氏の忘却曲線は時間の経過と忘却率を示していますが、この忘却曲線も完全に忘れ去る前に反復学習をすることによって忘却率を最小限にくいとめ記憶として定着することが可能です。
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このように、人間は記憶の動物でありながら、いかに忘れやすいかがわかります。エンビングハウスの実験では復習や反復学習の大切を教えています。
教育心理学者ゲーツのこんな実験があります。中学生に短い物語を暗記させるのに、2つの方法を行い、その違いを見てみました。A)物語をただ100回読むだけ。B)20回読んで後の80回は暗唱させて、その誤りを訂正させました。
結果は歴然、Bの方法では4時間後の記憶率が48%に対し、Aの方法ではわずか15%でした。これは、ものを覚える時は「単に何回も棒読みする」よりも「暗唱して、間違いを訂正しながら覚える」ほうがずっと、記憶率が高くなることを示しています。
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記憶は「人間であること」を証明するもっとも重要な精神活動といわれています。それだけに、記憶力を高めるために私たちは様々な記憶法を試みてきました。ここでは、視覚と聴覚という面から、もう一度、記憶法を図解しながら比較検討してみます。 |
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黙読による記憶術 |
視覚だけに頼る記憶法です。しかし、記憶しようという意志のあるときは、知らず知らずのうちに口を動かしていることが多いといわれています。やはり、視覚だけでは不十分なことが、無意識のうちに理解されているからでしょう。
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主に視覚作用が働くだけで、他のモダリティを有効に使っていないので、記憶力は一番劣っている。
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音読による記憶術 |
自分で見て、声を出して読むのが「音読による記憶法」です。視覚と発声作用は記憶を助けますが、聴覚は間接的なため十分に働かず、そこに難点があります。黙読同様これも一般に広く行われている記憶法です。
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主に2つの作用による記憶が中心となるので、黙読だけに比べて、より確かな記憶となる。
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フィードバック記憶術(やまびこ記憶術) |
原始的な方法ですが、今なお形を変えて行われています。そもそもは、前方の山に向かって叫び、そのこだまに耳を澄ませるという方法です。例えば電話口で、相手の言葉を繰り返すのもこの変形ですし、テープレコーダーを使って自分の吹き込んだ声を再生して聞くのも、原理は同じといえるでしょう。
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自分の声が一度外に出て、それから耳に入るので、聴覚作用が働き、記憶法としてすぐれている。
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